置物にみる加飾技術について
置物にみる加飾技術について
「九谷焼330年史」によると、大正末期から昭和にかけて根上地区の福島には置物に盛錦の画風を確立した大石太吉という人がいたと記されています。小松市蛭川で働いていた画工の一人で、明治30年頃からこの工房に置物が入ってきた時から取り組み始めたと考えられます。その頃、同じ根上地区の高坂では米田五三郎が牡丹獅子や布袋様、梟や招き猫などの置物専門の陶商を始め、また米田五三郎商店の番頭を経て独立した米田米作は素地を八幡から購入し工房で着画したとあります。下ノ江に構える深彩窯初代糠川清作氏も、この時代に置物の技法「交趾(こうち)」を築いた方。 能美市産業九谷の特徴の一つである置物絵付について深彩窯三代目糠川孝之さんにお聞きしました。
「九谷焼330年史」によると、大正末期から昭和にかけて根上地区の福島には置物に盛錦の画風を確立した大石太吉という人がいたと記されています。小松市蛭川で働いていた画工の一人で、明治30年頃からこの工房に置物が入ってきた時から取り組み始めたと考えられます。その頃、同じ根上地区の高坂では米田五三郎が牡丹獅子や布袋様、梟や招き猫などの置物専門の陶商を始め、また米田五三郎商店の番頭を経て独立した米田米作は素地を八幡から購入し工房で着画したとあります。下ノ江に構える深彩窯初代糠川清作氏も、この時代に置物の技法「交趾(こうち)」を築いた方。 能美市産業九谷の特徴の一つである置物絵付について深彩窯三代目糠川孝之さんにお聞きしました。
伝統工芸士 深彩窯
糠川孝之(はせがわたかゆき)さん
伝統工芸士 深彩窯
糠川孝之(はせがわたかゆき)さん
祖父の代からこういった置物をメインでやっている仕事なので、このロディの話をもらった時には面白そうだなと感じ、「ぜひやりましょう」の一言でスタートしました。ロディに関しては、最初に目を描き入れます。その目的としてまず先に表情を作ることが一つ。もう一つは胴体部分に模様が描かれた状態だと目を描く際、胴体に触ることにより模様を剥がしてしまったり汚してしまうことが無いよう真っ白な状態でまず目を仕上げます。
祖父の代からこういった置物をメインでやっている仕事なので、このロディの話をもらった時には面白そうだなと感じ、「ぜひやりましょう」の一言でスタートしました。ロディに関しては、最初に目を描き入れます。その目的としてまず先に表情を作ることが一つ。もう一つは胴体部分に模様が描かれた状態だと目を描く際、胴体に触ることにより模様を剥がしてしまったり汚してしまうことが無いよう真っ白な状態でまず目を仕上げます。
そこさえ終われば、あとは呉須で模様を描いていきます。我が家の焼成温度や使う絵具に合わせて幾度となく試験をして、たどり着いた完全オリジナルな呉須になります。
そこさえ終われば、あとは呉須で模様を描いていきます。我が家の焼成温度や使う絵具に合わせて幾度となく試験をして、たどり着いた完全オリジナルな呉須になります。
作業は、いろいろなアイテムを並行して行うことが多いです。ロディを手掛けたり、フクロウを手掛けたり、またその合間に招き猫を手掛けたり。その理由として呉須を使うタイミングで一気に色々な種類の品を描いていきます。また塗る時もタイミングを合わせ並行作業で塗っていきます。絵具を塗った後、乾くまで作業が止まってしまうので、ひとつのアイテムを乾かしている間にまた別のアイテムを塗り、その繰り返しなので工房内は、遣り掛けがたくさん置いてあるのです。
作業は、いろいろなアイテムを並行して行うことが多いです。ロディを手掛けたり、フクロウを手掛けたり、またその合間に招き猫を手掛けたり。その理由として呉須を使うタイミングで一気に色々な種類の品を描いていきます。また塗る時もタイミングを合わせ並行作業で塗っていきます。絵具を塗った後、乾くまで作業が止まってしまうので、ひとつのアイテムを乾かしている間にまた別のアイテムを塗り、その繰り返しなので工房内は、遣り掛けがたくさん置いてあるのです。
ボディ全体に塗った品は、自然乾燥でゆっくり乾かす必要があります。窯入れのタイミングを逆算しながら段取りをするのですが、明日に窯を焚こうと思えば乾かす時間を考慮して今日中に仕上げておく必要があります。少しでも濡れている状態で窯入れしてしまうと色の縮れが起きるので焦りや急ぎは禁物です。 問屋などから依頼され「すぐに欲しい」と言われても、どうしても乾かす時間を考えると慌てるわけにはいかないのが現状なのです。
ボディ全体に塗った品は、自然乾燥でゆっくり乾かす必要があります。窯入れのタイミングを逆算しながら段取りをするのですが、明日に窯を焚こうと思えば乾かす時間を考慮して今日中に仕上げておく必要があります。少しでも濡れている状態で窯入れしてしまうと色の縮れが起きるので焦りや急ぎは禁物です。 問屋などから依頼され「すぐに欲しい」と言われても、どうしても乾かす時間を考えると慌てるわけにはいかないのが現状なのです。
このフクロウの素地は鋳込みで作るのですが、型の底から泥漿を流し込み石膏型を開き形作るので、底に穴が空いています。塗り進めるにつれて持つ所がなくなるので、底穴に指を入れて塗っていく感じです。これくらいの大きさだと全然片手で持てますが、ひと回り、ふた回り大きくなってくると流石に重くなり指では支えられずパーツごとに塗り分けて仕上げていきます。 絵具の塗り具合が薄いと薄っぺらな感じになるので、塗るというよりも絵具を乗せていくような感じです。
このフクロウの素地は鋳込みで作るのですが、型の底から泥漿を流し込み石膏型を開き形作るので、底に穴が空いています。塗り進めるにつれて持つ所がなくなるので、底穴に指を入れて塗っていく感じです。これくらいの大きさだと全然片手で持てますが、ひと回り、ふた回り大きくなってくると流石に重くなり指では支えられずパーツごとに塗り分けて仕上げていきます。 絵具の塗り具合が薄いと薄っぺらな感じになるので、塗るというよりも絵具を乗せていくような感じです。
薄くてもいいのであればさっと塗れるのですけど、置いていく感じだとどうしても一回の筆で塗れる範囲が少ないので、何度も品物と乳鉢との間を筆が行ったり来たりの繰り返しです。広範囲をムラなく塗ることも一つの技術だと思います。
薄くてもいいのであればさっと塗れるのですけど、置いていく感じだとどうしても一回の筆で塗れる範囲が少ないので、何度も品物と乳鉢との間を筆が行ったり来たりの繰り返しです。広範囲をムラなく塗ることも一つの技術だと思います。
絵具のとろみ感について
絵具のとろみ感について
どうしても立体物だと塗っている段階で絵具が流れてしまう場合もあるので、塗り易さのサラサラ感を残しつつ、厚みがあっても流れないモチっとした感じになるように調整します。肝心なのは「水」と「ふのり」の絶妙なバランスです。
使う絵具も独自で調合していて、代々伝わるレシピとなります。それを基に作風や時代に合わせて微調整しながら調合しています。 ただ近年、廃番や入手困難になる原材料も増え、調達が難しくなってきています。その為に代用品を探したり、新たな材料での調合テストなどすることはたくさんあります。
どうしても立体物だと塗っている段階で絵具が流れてしまう場合もあるので、塗り易さのサラサラ感を残しつつ、厚みがあっても流れないモチっとした感じになるように調整します。肝心なのは「水」と「ふのり」の絶妙なバランスです。
使う絵具も独自で調合していて、代々伝わるレシピとなります。それを基に作風や時代に合わせて微調整しながら調合しています。 ただ近年、廃番や入手困難になる原材料も増え、調達が難しくなってきています。その為に代用品を探したり、新たな材料での調合テストなどすることはたくさんあります。
窯元さんも絵描きさんもそうですけど、これまで九谷焼業界を支えてくれた多くの方々においては、高齢化が進んでいます。とはいえ毎年、九谷焼技術研修所から多くの卒業生が業界に飛び込んで来てくれていて、新しい仲間が増えることを大変嬉しく感じています。
同じ「志」を持った仲間同士、これからの九谷焼を更に盛り上げていけたらと思います。
窯元さんも絵描きさんもそうですけど、これまで九谷焼業界を支えてくれた多くの方々においては、高齢化が進んでいます。とはいえ毎年、九谷焼技術研修所から多くの卒業生が業界に飛び込んで来てくれていて、新しい仲間が増えることを大変嬉しく感じています。
同じ「志」を持った仲間同士、これからの九谷焼を更に盛り上げていけたらと思います。
プロフィール
1973 石川県能美郡にて出生
1991 石川県立工業高等学校工芸科卒業
1993 卒業制作展優秀賞受賞
        飛騨国際工芸学園窯業科卒業
1995 九谷焼技能展 奨励賞受賞
        石川県立九谷焼技術研修所 専門コース卒業
        第16回 創彩展初入選 新人賞受賞
1997 全国伝統的工芸技術修得奨励者に推挙
2003 第42回 日本現代工芸美術展 現代工芸新人賞
        日本現代工芸美術家協会本会員に推挙
        石川県伝統産業技能奨励賞 受賞
2007 第63回 石川県現代美術展 北國賞受賞
2011 石川県伝統産業優秀技術者奨励者に推挙
2012 伝統工芸士に認定
2013 円谷プロ公認「九谷焼ウルトラマン」絵付制作
2014 北陸新幹線金沢駅待合室 壁面陶板制作
2016 東宝公認「九谷焼ゴジラ」絵付け制作
        東急ハンズ金沢店オープン限定ロディ制作
2017 小学館公認「九谷焼ドラえもん」絵付け制作
        イオンモール新小松モニュメント制作に参加
2019 タウンページ かが版・野々市版.
        表紙絵皿制作
        能美ご当地ポスト「風景印九谷焼オブジェ」制作
2020 第64回JRA G1大阪杯
      「ラッキーライラック号」優勝記念品制作
2021 第62回JRA G1 宝塚記念
      「クロノジェネシス号」優勝記念品制作
        石川県立九谷焼技術研修所 「上絵基礎」講師就任
2022 人形作家ホリ・ヒロシ45周年記念作品
        「招きうさぎ」制作協力


~美術展入選~
・創彩展入選
・高山市民美術展入選
・北陸中日美術展入選四回
・現代美術展入選十二回
・日本現代工芸美術展入選十三回
・伝統九谷焼工芸展入選五回
・日展入選八回
プロフィール
1973 石川県能美郡にて出生
1991 石川県立工業高等学校工芸科卒業
1993 卒業制作展優秀賞受賞
        飛騨国際工芸学園窯業科卒業
1995 九谷焼技能展 奨励賞受賞
        石川県立九谷焼技術研修所 専門コース卒業
        第16回 創彩展初入選 新人賞受賞
1997 全国伝統的工芸技術修得奨励者に推挙
2003 第42回 日本現代工芸美術展 現代工芸新人賞
        日本現代工芸美術家協会本会員に推挙
        石川県伝統産業技能奨励賞 受賞
2007 第63回 石川県現代美術展 北國賞受賞
2011 石川県伝統産業優秀技術者奨励者に推挙
2012 伝統工芸士に認定
2013 円谷プロ公認「九谷焼ウルトラマン」絵付制作
2014 北陸新幹線金沢駅待合室 壁面陶板制作
2016 東宝公認「九谷焼ゴジラ」絵付け制作
        東急ハンズ金沢店オープン限定ロディ制作
2017 小学館公認「九谷焼ドラえもん」絵付け制作
        イオンモール新小松モニュメント制作に参加
2019 タウンページ かが版・野々市版.
        表紙絵皿制作
        能美ご当地ポスト「風景印九谷焼オブジェ」制作
2020 第64回JRA G1大阪杯
      「ラッキーライラック号」優勝記念品制作
2021 第62回JRA G1 宝塚記念
      「クロノジェネシス号」優勝記念品制作
        石川県立九谷焼技術研修所 「上絵基礎」講師就任
2022 人形作家ホリ・ヒロシ45周年記念作品
        「招きうさぎ」制作協力


~美術展入選~
・創彩展入選
・高山市民美術展入選
・北陸中日美術展入選四回
・現代美術展入選十二回
・日本現代工芸美術展入選十三回
・伝統九谷焼工芸展入選五回
・日展入選八回